能登の魚醤油(うおしょうゆ)「いしり物語」

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写真:魚醤油(うおしょうゆ)「いしり」とは?


  江戸中期ごろから伝わる製法

石川県の能登半島では、古くからいかや魚を原料とした「魚醤油」づくりが行われてきました。地元では刺身や煮物の隠し味、郷土料理、伝統料理に今も広く使われています。なぜ魚醤づくりが盛んだったのか、いつごろからつくられたかについては正確な資料がなく、はっきりしませんが、地元の生産者によれば江戸中期以降、1700年代の後半にはすでに知られていたようです。能登町宇出津では、そのころのものと思われる木桶でいしりを漬け込む生産業者もいて、伝統的な製法は今に伝えられています。

  「いしり」と「いしる」がある

能登の魚醤には大きく2種類あります。一つは、主に富山湾に面した内浦地区でつくられる真イカの内臓を使った「いしり」、もう一つは日本海側の外浦に面した地区に伝わり、いわしやサバなどを主な原料とする「いしる」です。それぞれの地域でむかしから漁獲量が多かった魚介類を原材料にしたのが特徴で、「いしる」は、輪島港(輪島市)や蛸島港(珠洲市)、富来福浦港(志賀町)といった漁港町で、「いしり」は能登町の小木港、宇出津港などの漁港町でつくられています。

  語源は、魚の「汁」!?

「いしり」の語源は諸説ありますが、魚のことを「古語」で「いお」または「い」といい、その「汁」が転訛して「いおしる→いしる」または「いしり」となったという説が一般的なようです。魚の余った汁という意味の「よしる」や「よしり」、塩で漬けることから「塩しる」「塩しり」とも呼ばれています。

  生産量で日本一を誇る三大魚醤のひとつ

魚醤油といえば、世界的にはタイのナンプラーやベトナムのニョクナムが有名ですが、国内でも秋田県の「しょっつる」や、香川県の「いかなご醤油」などがあります。いずれも魚を原材料にしています。能登半島の「いしり」は、その中でも生産量で日本一を誇っています。

  能登町にしかない産地限定品

能登の魚醤の中で、真イカの内臓をつかって自然発酵させ、熟成させる「いしり」は、全国でも能登町でしか作られていません。能登町の小木港は、国内では北海道函館、青森県八戸と並ぶイカの産地で、むかしから新鮮な真イカがふんだんに手に入ります。それゆえ真いかの内臓を使った「いしり」の製造に適しており、能登町では材料の調達から製造、加工、販売までを一人の生産者で賄うことも珍しくありません。能登人がつくる、手づくりの味。正真正銘の産地限定品なのです。

  生産者のこだわりが独自の味になる

能登町の「いしり」は、晩秋から初冬(11月ごろ)にかけて仕込み、翌年夏の終わりから秋にかけて出来るのが一般的ですが、地元ではまろやかさを出すためにさらに1年から2年かけて熟成させます。いしりには、生産者一軒一軒のこだわりがあり、独自の味があります。共通するのは「ゴロ」と呼ばれる真いかの内臓を取り出し、塩を入れて漬け込み、自然発酵、熟成させること。伝統の工程、製法を受け継ぎながら、仕込んで1~3年かけて造られたものが店頭に並びます。
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  自然万能調味料として見直されている

能登町で生産される「いしり」は、様々な食材との相性が良く、料理の隠し味として最適な自然万能調味料ですが、その秘密はどこにあるのでしょうか?実は、うま味の元となる総遊離アミノ酸が、穀物醤油や海外の魚醤と比べて非常に多く含まれていることが専門機関の研究、調査から明らかになっています。抗酸化性を示す物質や、低分子のペプチド、さらに血圧上昇抑制物質の存在も確認されており、自然発酵、スローフード、ヘルシーで安全・安心な自然万能調味料として見直されているのです。


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